車のサスペンションとは?役割や交換する理由、交換費用・工賃などを解説

2022年7月更新

サスペンションの構造

サスペンションは、車の足まわりに欠かせない部品です。タイヤの位置を決めているほか、走行中に地面からの衝撃を吸収するなど、安全で快適な走行のための大切な役割を担っています。また、自分の車を好みの見た目に近づけるドレスアップ用のアイテムとして使われることがあるのも特徴です。

本記事では、車のサスペンションの役割や交換する理由、交換費用などを詳しく解説します。

サスペンションとは?

車のサスペンションは、車体の底部とタイヤをつなげる部品です。サスペンションによってタイヤの位置が決められています。また、サスペンションは路面からの振動を吸収する役割を持っており、凹凸のある道路でも快適に自動車に乗ることができます。

サスペンションの構成パーツ

サスペンションは、以下のパーツで構成されています。

  • コイルスプリング(バネ)
  • ショックアブソーバー(ダンパー)
  • サスペンションアーム

バネの部分は、コイルスプリングではなく、トーションバーやリーフスプリングなどで構成されている場合もありますが、現在の乗用車ではコイルスプリングが主流となっています。

コイルスプリング

コイルスプリングは、金属の線材をらせん状に巻いたバネで、路面からの衝撃を和らげる役割を担っています。バネの太さや巻き数、全長などで性能が異なりますが、太くて巻き数が多いから良いというわけではなく、それぞれの車両の特性に合っていることが重要です。

コイルスプリングは車の走行に直接影響するパーツで、耐久性や耐腐食性、疲労強度など、さまざまな要件が求められるため、ばね鋼鋼材という特殊な金属が使用されています。

ショックアブソーバー(ダンパー)

コイルスプリングによって衝撃は吸収できるものの、バネの特性上、衝撃を受けると振動が発生します。その振動を素早く抑える役割を担うパーツが、ショックアブソーバーです。

標準的なショックアブソーバーの構造は筒状で、筒の中には粘度の高いオイルと穴の空いたピストンが入っています。コイルスプリングの振動に合わせてピストンが移動する際に、オイルが穴を通過することで抵抗が生まれます。その抵抗によって、衝撃を受けて縮んだバネの戻ろうとする勢いを減衰させ、穏やかな動作に変換することでコイルスプリングの振動を抑えるという仕組みです。

サスペンションアーム

サスペンションアームは、コイルスプリングとショックアブソーバーとともにタイヤを支えるパーツです。車体に対する車軸やタイヤの位置を決めているほか、タイヤを上下に動かし、「車が安定して走行する」という基本的な動きを可能にしています。

サスペンションの2つの方式

サスペンションには大きく分けて、固定車軸方式と独立懸架方式の2つがあります。

固定車軸方式(リジットタイプ)

固定車軸方式の構造

固定車軸方式は、左右のタイヤが1本の車軸で連結されているシンプルな方式で、「リジットタイプ」と呼ばれることもあります。特に、乗用車で主流のコイルスプリングを採用したサスペンションの場合は、リンク式(コイルリジット式)と呼ばれます。

固定車軸方式は構造が単純なため、整備性と耐久性に優れており、低コストです。そのため、固定車軸方式が採用されている車両の本体価格は、比較的安く設定されます。

ただし、次に説明する独立懸架方式と比べると、地面からの衝撃が伝わりやすい点がデメリットといえます。これは、左右の車軸がつながっており、一方のタイヤが受けた衝撃がもう一方のタイヤに伝わりやすいためです。

独立懸架方式(インディペンデントタイプ)

独立懸架方式の構造

独立懸架方式は、固定車軸方式とは異なり、左右それぞれのタイヤが別々の車軸についている方式です。インディペンデントタイプと呼ばれることもあります。

独立懸架方式のサスペンションには、マルチリンク式、マクファーソンストラット式、ダブルウィッシュボーン式などさまざまなタイプがあり、車両の特性に合ったタイプが採用されています。スポーツカーなどの場合は、前後のサスペンションで別のタイプを採用していることもあります。

独立懸架方式のサスペンションは、路面のうねりや高低差に対し、左右それぞれのタイヤが反応します。そのため、接地性に優れており、衝撃が伝わりにくく乗り心地も良好です。アライメント調整といって、車軸の角度を細かく調整することもできます。

ただし、整備に手間がかかり、コストも固定車軸方式より高くなる点はデメリットといえるでしょう。

サスペンションを交換する理由・メリット

自動車の足回り

ここまで、サスペンションの役割や種類を解説してきました。ここでは、どのようなときにサスペンションを交換するのか、また、交換した場合のメリットについて解説します。

乗り心地の向上・改善

コイルスプリングやショックアブソーバーは、長年の使用によってバネやオイルが劣化します。劣化が進むと、衝撃をうまく吸収することができず、乗り心地の良さを維持できません。また、サスペンションを構成するパーツにはゴムでできた箇所もあり、ゴムが劣化するとオイル漏れなどを引き起こすこともあります。

サスペンションを交換することで、本来の乗り心地を取り戻し、安全で快適な走行を維持できます。

また、交換の際は、純正のサスペンションから、機能性の高いサスペンションに換えることで、乗り心地の向上・改善が見込める場合があります。さまざまなチューニングメーカーなどから、交換用サスペンションが販売されているため、好みの乗り心地に近づける製品を選ぶとよいでしょう。

操作性・安定性の向上

操作性や安定性の向上は、いわゆる“街乗り”であれば、あまり気にすることがないかもしれません。ただし、山道を走行する機会の多い方や、車の性能を余すところなく発揮させたいという方は、サスペンションの硬さなどを変更することにより、求める走りに近づけることができるでしょう。

ドレスアップ

サスペンションの製品には、車高を変えることを目的とした「車高調(車高調整式サスペンション)」や「ダウンサス」というものがあります。車をより好みの見た目に近づけるドレスアップのために車高を調整することができるのも、サスペンションを交換する理由の一つでしょう。

ただし、自動車の保安基準により、車両の一番低い部分の地上高(最低地上高)は地面から9cm以上必要と定められています。車高を下げすぎるのは不正改造として違法になるため注意が必要です。

サスペンションの交換費用・工賃

自動車のサスペンション

サスペンションの交換を整備工場などに依頼する場合、自動車整備士の有資格者が交換作業を行います。個人で交換することもできますが、交換作業は非常に難しいため、十分な知識と技術がなければできません。そのため、基本的には整備工場やカー用品店に交換を依頼しましょう。

サスペンション本体+交換工賃の相場は10万円〜40万円

サスペンションの本体価格は5万円前後から、高いものでは30万円前後の製品まであります。交換工賃は、サスペンションを4本すべて交換した場合、2万円〜7万円程度です。本体価格と交換工賃を合計した相場としては、10万円〜40万円程度になります。

サスペンションの一部を交換する場合

サスペンション全体を交換するのではなく、一部のパーツを交換する方法もあります。たとえば、コイルスプリングを交換する場合は、本体+交換工賃で40,000円〜60,000円程度が費用相場です。また、ゴム部品であるブッシュを交換する場合は、本体+交換工賃で20,000円〜50,000円程度が相場となり、パーツによって値段は異なります。

一部のみの交換であれば、サスペンション全体を交換するよりも費用を抑えることができるため、予算や用途にあわせて検討してみてもよいでしょう。

交換の目安は走行距離や年数

サスペンション本体やパーツを交換するタイミングは、「走行距離50,000km以上、もしくは購入から10年経過」が目安になります。ただし、普段走行している道路の状態などによっても異なるため、走行を重ねた車両や悪路走行が多い車両に乗っている方は、法定点検や車検の際にサスペンションの状態を念入りに見てもらうとよいでしょう。

  • 上記は監修者の知見による費用相場です。サスペンションの本体価格や交換工賃は、車種、店舗、整備工場によってそれぞれ異なります。また、「交換工賃は依頼する店舗でサスペンション本体やパーツを購入しているか」「どのような製品を交換するのか」などによっても異なりますので、目安として参考にしてください。

まとめ

サスペンションは、車を安全・快適に走行するために必要な部品です。コイルスプリング、ショックアブソーバー、サスペンションアームによって構成され、タイヤの位置を決定するほか、走行中の衝撃を吸収する役割があります。

サスペンションを交換すると、乗り心地や操作性の向上、ドレスアップの効果が期待できます。ただし、車高を下げすぎると不正改造になるため注意が必要です。

サスペンション全体の交換費用は10万円〜40万円が相場で、一部のパーツを交換する場合は費用を抑えられます。個人で交換を行うことは可能ですが、高度な技術が必要になるため、基本的には信頼できる整備工場やカー用品店などに依頼をしましょう。

  • 本記事の内容は特段の記載がない限り、一般的なサスペンションの解説です。車種やメーカーによって解説内容と異なる場合があります。ご自身の車でご不明点やお気付きの点があった場合は、メーカーや整備工場にご確認ください。

小西 伸二

記事監修者:小西 伸二(こにし しんじ)

保有資格:1級小型自動車整備士・自動車検査員・2級/3級ガソリン整備士

高校卒業後、自動車メーカーの生産工場に就職。自動車整備士に憧れ、大阪の小さな修理工場で働きながら、自動車にまつわるさまざまな資格を取得。


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