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交通事故における損害賠償と賠償金の計算方法
自動車保険の「対人賠償保険」「対物賠償保険」は、交通事故を起こし、事故の相手方に対して損害賠償責任を負った場合、相手方への損害賠償金について補償が受けられるというものです。では、交通事故の損害賠償責任とはいったいどのようなもので、損害賠償額はどのようにして決まるのでしょうか。本ページでは交通事故における損害賠償責任と損害賠償額の計算方法を解説します。
交通事故の加害者が負う法律上の責任
交通事故が起こった場合、その事故の加害者には「刑事上の責任」「行政上の責任」「民事上の責任」が問われることになります。このうち、民事上の責任においては、民法および自動車損害賠償保障法にもとづいて、事故の加害者が被害者への損害賠償を負うことになります。
交通事故における損害賠償は、被害者の身体に関する損害を賠償するものと被害者の財物に関する損害を賠償するものとに分けられます。被害者の身体に関する損害賠償は財産的損害(「積極損害」と「消極損害」)と精神的損害(「慰謝料」)に大別されます。財物に関する損害の賠償は車の修理費などの「物損」の賠償です。
積極損害とは、その事故によって被害者が負担しなければならなくなった費用のことを指します。消極損害は、その事故がなければ被害者が得ていたはずの経済的利益です。これらの費用や失った利益を加害者は賠償しなければなりません。慰謝料は、その事故によって被害者が被った精神的・肉体的な苦痛についての賠償をするものです。また、物損は、被害者の財物に発生した損害のことをいいます。下記の表に、法律上の損害賠償責任を負う際の、交通事故における損害賠償の種類と内容の例をまとめたので、確認してみましょう。
交通事故における損害賠償の範囲
事故の種類 | 損害の分類 | 内容 | |
---|---|---|---|
人身事故 | 財産的損害 | 積極損害 | 治療費、付添看護費、入院諸雑費、通院交通費、葬儀費、弁護士費用などを賠償する |
消極損害 | ケガなどで働けなくなったために発生した収入の減少「休業損害」、後遺障害・死亡によって失われる将来の収入「逸失利益」などを賠償する | ||
精神的損害(慰謝料) | 精神的・肉体的な苦痛を賠償する | ||
物損事故 | 車の修理費や、積荷、建物、その他の破損や損壊などの修理費や再調達費用などを賠償する。 |
財物に関する損害の損害賠償責任範囲は「過失割合」に応じて決まる
交通事故では当事者双方に何らかの損害が生じ、双方が加害者であり、被害者であるというケースも少なくありません。そのような事故では、両者に対して何らかの責任が問われることがあります。それでは、事故によって発生した損害を賠償する責任とその金額はどのように決められるのでしょうか。
そこで重要になるのが「過失割合」という考え方です。過失割合とは、事故の過失全体を100%とし、当事者双方の過失がどの程度の割合であるかを表すものです。たとえば、事故の当事者双方に同等の過失があった場合、その事故における両者の過失割合は50%対50%(50:50)となります。過失割合は多くの場合、事故の当事者が契約している保険会社同士が過去の裁判例などを基準に協議し、両者の合意をもって決定します。
交通事故における損害賠償額は、事故の状況によって、当事者双方の損害額を過失割合で過失相殺(差し引き)し、決定します。たとえば、AさんとBさんが車を運転中に事故を起こした場合、それぞれの損害額はいくらか、過失割合はどの程度かによって、請求可能な損害賠償額が決まります。
財物に関する損害の具体的な損害賠償額の計算方法
では、交通事故における損害賠償額は具体的にはどのように計算されるのでしょうか。よりイメージしやすいように、下記のイラストをもとに3つのケースについて考えてみましょう。
交通事故における損害賠償額はどのようにして決まる?
ケース1 AさんBさんともに損害額50万円、過失割合50%の場合
お互いに50万円×50%=25万円が請求可能な損害賠償額となります。
ケース2 Aさんの損害額50万円、過失割合30%。Bさんの損害額100万円、過失割合70%の場合
Aさんは50万円×70%=35万円、Bさんは100万円×30%=30万円が請求可能な損害賠償額となります。
ケース3 Aさんの損害額50万円、過失割合0%。Bさんの損害額100万円、過失割合100%の場合
Aさんにとっては、過失割合が0%対100%(0:100)となる、いわゆるもらい事故と呼ばれるケースです。この場合は、過失割合100%のBさんがAさんの損害額すべてを支払うことになります。
なお、今回紹介した損害賠償額の計算方法は、あくまで参考例です。実際の交通事故では、より複雑な事情や状況などが示談交渉の内容や裁判の裁定に加味される場合があります。
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