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ラジエーターとは?冷却水の補充や交換の方法、修理にかかる費用を解説
2021年2月更新
ラジエーターとは、車のエンジンが高温になるのを防ぐパーツで、中には冷却水が入っています。ラジエーターは故障すると重大なトラブルや事故に発展してしまう恐れがあるため、冷却水の量を確認、必要に応じて補充するなど、定期的なメンテナンスが欠かせません。
本ページでは、ラジエーターの役割や冷却水の補充方法のほか、故障したときの修理方法や費用などを解説します。
ラジエーターとは?
ラジエーターは、車のエンジンを冷却するための部品の一つで、長時間の運転などでエンジンの温度が高くなりすぎることを防ぎます。
一般的にラジエーターは、フロント(前方)のナンバープレートの裏付近に取付けられます。車が走行することによって受ける風を利用してラジエーターとラジエーター内の冷却水を冷やし、その冷却水が水路を通ってエンジンの温度を下げています。
なお、ラジエーターの冷却水は、ラジエーター液やクーラント液、LLC(ロング・ライフ・クーラント)などと呼ばれることもあります。
ラジエーターの役割・効果
ラジエーターの役割は、熱くなりすぎたエンジンの冷却です。ラジエーター内にある冷却水をラジエーターが冷やし、エンジンが高温になるのを抑えています。
長時間の運転や炎天下での走行は特にエンジンの温度が上昇し、高温の状態が続けば、温度が高くなりすぎた状態(オーバーヒート)になります。最悪の場合、エンジンが焼き付き、車が全損してしまう可能性もあり大変危険です。ラジエーターは、エンジンを正常に動作させるために非常に重要な役割を担っています。
ラジエーターの構造
ラジエーターにはタンクとホースが付いています。ラジエーターの冷却水は走行中、ウォーターポンプというパーツの働きで常に動き、ホースをつたってエンジンを冷やしています。
冷却水とエンジンを冷やす具体的な仕組みは、以下のとおりです。
- ラジエーター内のチューブを通過する冷却水を走行中の風やファンで冷やす
- 冷やされた冷却水がラジエーター内のロアータンクに溜まる
- ホースを通じて冷却水がエンジンのウォータージャケット(冷却水の水路)へと流れ、エンジン温度を下げる
- エンジンの熱を奪い高温になった冷却水が、ラジエーターのアッパータンクに溜まる
- ラジエーター内で再び冷やされる
この1~5を繰り返しによって、エンジンが高温になりすぎることを防いでいます。
ラジエーターの冷却水の補充方法
国土交通省では、マイカーの安全と環境保全の観点から日常的・定期的な点検や整備を推奨しています。点検項目(注)の中にはラジエーターの冷却水の量の点検もありますので、定期的に確認するようにしましょう。
冷却水の補充タイミングは、冷却水のタンク側面の目盛りに記載された「下」や「LOW」、「MIN」のラインよりも少なくなっていたり、目盛りギリギリまで減っていたりしたときです。
冷却水は、エンジンルーム内の「リザーバータンク」に補充します。ただし、エンジンルーム内には、ブレーキ液、ウォッシャー液、バッテリー液などのタンクもありますので、間違えて注入しないように注意してください。
一般的なリザーバータンクのキャップには、「冷却水」や「COOLANT」といった文字の記載、もしくはメーターと同じ水温計のマークなどが記載されています。
冷却水は一般的に水で希釈して使いますが、希釈をしないタイプの製品もあります。希釈の有無や希釈率を誤ってしまうと、故障やトラブルの原因になりますので、説明書などをよく読んだうえで補充してください。
冷却水を補充する際のポイントは、以下の4つです。
- 補充するタンクをよく確認する
- 補充の前に、タンクの「エア抜き」をする
- タンクの目盛りを見ながらゆっくりと注ぎ入れる
- 水だけの補充は避け、冷却水を補充する
「エア抜き」とは、ラジエーターホース内に混ざっている空気を抜く作業です。ラジエーターホース内に空気が混ざっていると、エンジンによって冷却水の温度が上がったとき、その空気が熱によって膨張してしまい、オーバーヒートの原因となってしまいます。
エア抜きをするには、まずラジエーターキャップを外し、冷却水を補充せずにキャップを開けた状態でエンジンを始動。アクセルを踏み、エンジンの回転数が上昇してもタンクから空気の泡が出ないことを確認します。空気が出なくなれば、エア抜きは完了です。
その後、リザーバータンクの目盛りを見ながら冷却水を注ぎ入れます。漏斗(ろうと)などを利用すると、冷却水をこぼしにくくなります。冷却水をこぼしてしまった場合は、使い捨てのクロスなどで拭いてください。
なお、水道水だけでもエンジンを冷やすことは可能ですが、サビや凍結に繋がりやすくなります。万一のトラブルや事故を引き起こさないためにも、水道水を使用するのは緊急時のみとし、ラジエーターには専用の冷却水を補充することを推奨します。
ラジエーターや冷却水、キャップの交換はいつ行う?
ラジエーターや冷却水、キャップは定期的に交換が必要です。交換時期の目安がそれぞれ異なる点に注意してください。
ラジエーターの交換
ラジエーターの交換時期は普通車であれば8~12年、軽自動車では6~10年です。寿命は比較的長く、長年乗り続けた車でも交換の機会はそう多くありません。
しかし、冷却水の交換頻度があまりに少ないと、ラジエーター内で腐食や損傷が起こり、故障につながるケースもあります。ラジエーターを長持ちさせるためにも、冷却水の交換を定期的に行いましょう。
冷却水の交換
冷却水は、酸化や腐食を防ぐために交換を行います。冷却水には、LLCとスーパーLLCと呼ばれる2種類があり、種類によって交換頻度は異なるため以下を参考にしてください。
- LLC:2年に1回
- スーパーLLC:新車で16万kmまたは7年、2回目以降は8万kmまたは4年
LLCは「Long Life Coolant」の略称で“長く使える冷却水”という意味です。昔使われていた冷却水より長持ちするために付けられた名前で、交換は2年に一度です。
一方のスーパーLLCは、通常のLLCよりさらに性能が良くなった冷却水です。一度目の交換は16万km走行するか7年経過が目安となっており、非常に長持ちします。ただし、車種によって冷却水の交換目安は異なってくるため、不明な場合はメーカーや整備工場に相談してください。
どの冷却水が使用されているのかわからない時は、車の取扱説明書や整備ノートに記載がある場合が多いため、乗り出し時や交換時に確認してください。自分で冷却水を交換した際は、次の交換時にどの冷却水を使用したかがわかるように、メモなどをしておくと安心です。
キャップの交換
ラジエーターキャップには冷却水の漏れを防いだり、冷却水が沸騰しても気化して減少するのを防いだりする役割があります。そのため、きちんと密閉された状態で装着されていなければいけません。
交換時期の目安は、キャップの種類や環境によって異なりますが、年に1回は点検し劣化などの異常があれば交換しましょう。なお、冷却水の減りが早い場合は、きちんと密閉できていないか漏れている可能性があります。ラジエーターの部品のなかでもキャップは特に劣化しやすいため、定期的に点検することが大切です。
ラジエーター故障時の症状原因、対処法
いち早くラジエーターの故障に気づくためには、どのような症状が現れるのか知っておく必要があります。ここからは、故障の症状や原因、対処法についてご紹介します。
故障時の症状
次のような症状がある場合、ラジエーターが故障して冷却水が漏れている可能性があります。
- アイドリング時や低速走行時にエンジンルームから冷却水特有の甘い匂いがする
- メーター内の水温警告灯が点灯している
- メーター内の水温計が異常な温度を示している(70~95度が正常)
ラジエーターが故障すると、冷却水でエンジンを冷やせず、オーバーヒートを起こします。その結果、エンジン内のオイルが機能せずにエンジンの部品同士が擦れ合い、焼き付いてしまいます。この状態で放置すると、エンジンが故障して車が動かなくなる恐れもあります。
故障の原因
ラジエーターの故障には、以下のような原因が考えられます。
- タンクの損傷
- 冷却水の交換不足によるラジエーターの劣化
- キャップの劣化による、冷却水が蒸発し量が不足している
- ラジエーターホースの劣化による冷却水漏れ
冷却水の量が減っていないか、パーツの劣化・破損がないかなどを定期的に確認することで、大きなトラブルや事故が起きる前に故障を察知できます。
故障時の対応・対処法
走行中に水温計の表示異常やエンジンのオーバーヒートなどを感じたときは、次のように対処します。
- 車を安全な場所に停めてエンジンの温度が下がるのを待つ
- リザーバータンクに入っている冷却水の量を確認する
- 整備工場やロードサービスに連絡する
まず、車を安全な場所に停めてエンジンを切り、温度が下がるのを待ってください。ラジエーターのキャップや周辺のパーツは高温で、熱された冷却水に強い圧力が加わっているため、すぐに触るのは厳禁です。高温時にキャップを外すと、中の冷却水が飛び出してやけどをする可能性があります。
冷却水の温度が下がったら、リザーバータンクに入っている冷却水の量を目視で確認します。このときも、絶対にキャップに触れてはいけません。冷却水が減っている場合、破損による水漏れの可能性があります。なお、冷却水が漏れている場合は、甘い匂いがするため目安にしてください。
冷却水の量が正常で温度が下がったとしても、異常が出ている状態での走行は危険です。ディーラーや整備工場、ロードサービスへ連絡し点検してもらいましょう。
ラジエーターの交換・修理費用について
ラジエーターの修理や交換にかかる費用は以下のとおりです。
交換内容 | 本体費用の目安 | 工賃の目安 |
---|---|---|
ラジエーター本体 | 20,000円~80,000円程度 | 10,000円~30,000円程度 |
冷却水の補充・交換 | 約5,000円 | 2,000円~3,000円程度 |
タンク・ホースの交換 | 約15,000円 | 10,000円~30,000円程度 |
ラジエーターキャップの交換 | 1,000円~2,000円程度 | なし |
- 上記は監修者の知見による料金相場です。料金は車種や整備工場によってそれぞれ料金は異なりますので、本体の価格や工賃は目安として参考にしてください。
ラジエーターは純正部品・社外部品のどちらを使うかで金額が大きく変わります。
さらに車種や修理を依頼する整備工場によっても料金は異なるため、上記はあくまで相場として参考にしてください。
ラジエーターキャップは付け替えるだけで良く、工具も必要ないため、簡単に自分で交換できます。やけどしないよう、エンジンや冷却水の温度が下がっているときに行いましょう。
ラジエーターの交換や修理は、冷却水の入れ替えやエア抜きなどもあり、簡単ではありません。交換が難しいパーツのため、慣れていない人や車のメンテナンスに詳しくない方は、ディーラーや整備工場に交換を依頼してください。
ラジエーターはこまめな点検とメンテナンスを!
ラジエーターは冷却水を冷やし、エンジンのオーバーヒートを防ぐ重要なパーツです。
ラジエーターの寿命は比較的長く、頻繁な交換は必要ありませんが、冷却水の交換や補充を怠ると、ラジエーターの故障につながります。交換や修理の費用が高額になる場合もあるため、定期的な点検やメンテナンスを心がけて故障を未然に防ぎましょう。
- 本記事の内容は特段の記載がない限り、一般的なラジエーターの解説です。ご自身の車で不明点やお気づきの点があった場合は、メーカーや整備工場にご確認ください。
記事監修者:小西 伸二(こにし しんじ)
保有資格:1級小型自動車整備士・自動車検査員・2級/3級ガソリン整備士
高校卒業後、自動車メーカーの生産工場に就職。自動車整備士に憧れ、大阪の小さな修理工場で働きながら、自動車にまつわるさまざまな資格を取得。現在も自動車整備の仕事に携わっている。
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