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盗まれた車で事故を起こされた場合の、所有者の損害賠償責任と自動車保険の補償
「盗難車を運転していた人が事故を起こした」というニュースを見聞きしたことがある人は少なくないでしょう。盗難車は乱暴な運転をされることが多々あり、事故の原因となることも珍しくないようです。それではもし、自分の車が盗まれ、その車が事故を起こしたとしたら、事故の損害賠償責任はいったい誰が負うことになるのでしょうか。本ページでは盗難車を運転していた人が事故を起こした際の一般的な損害賠償責任の所在と自動車保険の補償について解説します。
盗難車を運転していた人が事故を起こしたら損害賠償責任は誰が負う?
「自分の車が誰かに盗まれてしまう」。そうそう起こり得ないことのようですが、警察庁が公表している「犯罪統計資料 平成30年1~12月分【確定値】」によると、2018年中の自動車盗難の全国での認知件数は8,628件にもおよんでいます。単純計算をすると1日当たりおよそ24件にものぼるわけですから、「決して起こり得ない犯罪被害」とはいい難いものといえるでしょう。
では、自分の車が盗難にあってしまい、その車を運転していた人が事故を起こし、他のドライバーの身体や財物に損害を与えてしまったとしましょう。この事故における損害賠償責任は誰が負うことになるのでしょうか。下のイラストをもとに確認してみましょう。
イラストの事例の場合、事故に巻き込まれてしまったCさんに対する損害賠償責任は、盗難車で事故を起こした窃盗犯Bが負うことになると考えるのが一般的です。ただし、事故を起こした車の本来の所有者であるAさんが車の管理を適切に行っていなかったとしたら、窃盗犯BだけでなくAさんも、Cさんに対する損害賠償責任を負うことになる場合があるので注意が必要です。
なお、車の適切な管理を行っていなかった場合とは、たとえば、エンジンをかけた状態やキーを付けっぱなしにした状態、ドアロックをしていない状態で、第三者が容易に接触可能な場所に車を停めていたり、長時間車から離れていたりといった場合が挙げられます。また、盗難被害にあったにもかかわらず盗難届を警察に提出せずに放置していた場合なども該当することがあります。
Aさんの管理責任が問われるか否かは、事件・事故の事情や状況によって異なります。ただし、Aさんが故意や過失によって、自分の車が盗まれやすい状況を作り出してしまっていたならば、「管理責任を問われることがある」ということを十分に注意しておきましょう。
盗難車を運転していた人が事故を起こしたら自動車保険の補償はどうなる?
自分の車が盗難にあってしまい、盗まれた車が人身事故や物損事故を起こした場合、自動車保険の補償はどうなるのでしょうか。車の本来の所有者に損害賠償責任がない場合とある場合とで補償が受けられるもの、受けられないものが異なります。それぞれのケースについて以下で確認してみましょう。
車の本来の所有者に損害賠償責任がない場合
車の管理は適切に行っていたものの、盗難被害にあってしまい、盗まれた車を運転していた人が人身事故や物損事故を起こしたとしても、車の本来の所有者にはその事故に関する損害賠償責任は生じません。したがって、盗難車が歩行者をはねてしまったり、電柱やガードレールに追突してしまったりしても、その車が加入している自動車保険の「対人賠償保険」や「対物賠償保険」は使えません。
なお、盗難被害にあった車の自動車保険に「車両保険」がセットされていれば、盗まれた車が戻らなかった際は、事故などによって全損してしまった場合と同等の補償を受けることができます。
車の本来の所有者に損害賠償責任がある場合
車の管理責任が問われてしまい、盗難車を運転していた人だけでなく車の本来の所有者にも損害賠償責任が生じるケースではどうでしょうか。この場合、盗まれた車が歩行者などを死傷させた場合は強制保険の自賠責保険と自動車保険の「対人賠償保険」の補償が受けられます。また、他人の家の壁や店舗に衝突した場合は「対物賠償保険」の補償を受けることができると考えられます。
「車両保険」については、基本的には車の本来の所有者に損害賠償責任がない場合と同等の補償が受けられます。ただし、問われた管理責任の度合いが重大な過失とみなされるようなケースでは、車両保険の補償が受けられない場合も考えられるため注意が必要です。
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