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ながら運転とは?食事は違反?危険性と厳罰化された罰則・罰金について解説
2021年3月更新
車の走行時におけるスマートフォンの操作や携帯電話での通話は、道路交通法違反になることをご存じの方は多いと思います。このような、走行中に他の何かの動作をすることを「ながら運転」と呼びます。
本記事では、ながら運転の定義や危険性、令和元年に厳罰化された罰則や罰金について解説しています。また、「食事やメイク(化粧)は違反なのか」などよくある疑問についても解決します。
ながら運転とは
ながら運転とは、車の運転中に、スマートフォン(携帯電話)やカーナビを注視・操作すること等の総称です。車だけでなく、オートバイや原付きバイクなども含まれます。
ながら運転は非常に危険な行為です。ながら運転が原因で多くの死亡事故が発生しており、事故発生時には重大事故につながる可能性が極めて高い交通違反です。
車を運転するときには決してながら運転はせず、走行中は常に運転に集中しましょう。
ながら運転を禁止する法律
ながら運転は、道路交通法「道路交通法第71条 第5号の5」によって明確に禁止されています。
ながら運転を禁止する法律
「自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る)を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」
引用:道路交通法第71条 第5号の5
要約すると、"スマートフォン(携帯電話)を手に持って通話することや、スマートフォン(携帯電話)やカーナビの画面を注視することは違反となる"ということになります。
ながら運転やながらスマホの危険性
ながら運転がこれほどまで明確に禁止されている理由は、他の交通違反と比べて非常に危険が大きいことにあります。
警察庁のデータ(注)によると、一般道路を時速30キロメートルで走行すると2秒間で約16.7メートル進む計算となります。また、運転手は2秒以上スマートフォン(携帯電話)の画面を注視すると、危険を感じて前方を確認する研究結果もあります。
前方を見ないままそれだけの長い距離を走れば、歩行者や停止車両が目に入ったときにブレーキが間に合わないケースは当然起こります。また、前方をしっかりと確認している場合と比べてブレーキのタイミングも遅くなるため、高速域で衝突する可能性も高く、重大な事故につながりやすいのです。
実際、令和元年中の交通事故のうち、ながら運転の場合とそうでない場合を比較すると、死亡事故の割合が約2.1倍も高まっています。
- 出典:警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」
ながら運転による事故は安全な場所が多い?
公益財団法人 交通事故総合分析センターのデータ(注)によると、ながら運転が原因による事故発生場所は、画像目的(注視や操作)だと55.0%、通話目的だと39.6%が直線道路となっています。
- 出典:公益財団法人 交通事故総合分析センター「携帯電話等の使用が要因となる事故の分析」
携帯電話等使用状況別「事故発生場所の割合」
単路(直線) | 交差点付近 | 無信号交差点 | 信号交差点 | そのほか | |
---|---|---|---|---|---|
画像目的 | 55.0% | 23.0% | 5.9% | 10.3% | 5.8% |
通話目的 | 39.6% | 14.5% | 18.7% | 20.1% | 7.1% |
非使用 | 38.7% | 13.3% | 25.2% | 16.1% | 6.7% |
- 公益財団法人 交通事故総合分析センター「携帯電話等の使用が要因となる事故の分析」を加工して表を作成
交差点やカーブではなく、比較的安全度が高そうな直線道路で事故が多いのは、「直進で見通しが良い」という油断があるからと推察されます。
また、ながら運転による交通事故のドライバーの年齢は20代~30代の割合が高く、17時~21時までの時間帯の割合が高いことも判明しています。
道路状況等に関係なく、運転中は常に前方をしっかりと注視し、安全運転を行うというドライバーの義務を忘れてはいけません。
【令和元年改正】ながら運転(改正道路交通法施行)の罰則・罰金
ながら運転の交通事故を減らすため、2019年(令和元年)12月に「携帯電話使用等(保持)違反」に関する法律が厳罰化されました。禁止事項はそのままに、罰則が重くなっています。
2021年1月現在、運転中にスマートフォン(携帯電話)での通話やカーナビなどの画面を注視すると、「6か月以下の懲役または10万円以下の罰金」が課されます。
2019年11月までと比べると、新たに懲役の罰則が追加され、罰金は「5万円以下」から「10万円以下」と2倍になりました。反則金は3倍の18,000円(普通車の場合)に、違反点数も3倍の3点となっています。
ながら運転によって事故を起こすなどの交通の危険を生じさせた場合、さらに厳しく「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が課されます。反則金はなく点数は3倍の6点となるため、反則金を納めて罰則を免れることができず、免許停止となります。
ながら運転に関する罰則の変更点(改正前と改正後の比較)
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
携帯電話の使用等(保持) | 罰則:50,000円以下の罰金 反則金:6,000円(普通車) 点数:1点 |
罰則:6か月以下の懲役または100,000円以下の罰金 反則金:18,000円(普通車) 点数:3点 |
携帯電話の使用等(交通の危険) | 罰則:3か月以下の懲役または50,000円以下の罰金 反則金:9,000円(普通車) 点数:2点 |
罰則:1年以下の懲役または300,000円以下の罰金 反則金:適用なし 点数:6点 |
2019年12月の法改正から、3か月間のながら運転の取り締まり件数は6万4,617件で、前年の同期間と比べると62.5%も減少しました。ながら運転による交通事故も前年同期比で45.0%に減って363件となり、厳罰化が大いに効果を発揮したとみられます。
しかし、いまだにながら運転の違反取り締まり件数は年間6万件以上あります。ながら運転のさらなる減少に向けて、すべてのドライバーが安全意識を高く持ち、ながら運転をしないことはもちろん、社会として許さない意識を作る必要があります。
ながら運転による事故の発生件数と死亡事故の件数
続いて、ながら運転が原因による交通事故件数と死亡事故件数を見ていきます。
警察庁のデータ(注)によると、「携帯電話使用等に係る交通事故発生状況」は2009年(平成21年)の年間1,380件に対し、10年後の2019年(令和元年)では約2倍の2,645件です。
内訳を見ると、最も多いのが「カーナビ等の画面への注視中」で1,602件、続いて「スマートフォン等の操作(画像目的使用)」が932件、「スマートフォン等での通話」が133件となっています。
ながら運転の中でも、カーナビやスマホの画面に気を取られての事故が9割以上にものぼることからも、これらの行為の危険性が分かります。
また、2019年の事故発生件数2,645件のうち、42件(1.5%)は死亡事故とつながっています。
カーナビやスマートフォン(携帯電話)の操作のために車を停めるのは面倒に感じるかもしれません。しかし、自身とそのほかの道路利用者の安全を守るためにも、車を安全な場所に停めて操作を行うことを徹底しましょう。
- 出典:警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」
どこから"ながら運転"になる?食事やハンズフリー通話はセーフ?
ここまで、ながら運転の危険性や罰則について解説してきました。しかし、実際、どこからがながら運転なのかと疑問に思われている方もいるかと思います。
以下では、どこからながら運転に該当するのかをご紹介していきます。
ながら運転の定義
ながら運転は法律的にも禁止されている行為ですが、すべてが禁止されてはカーナビの案内を見ることさえできません。ポイントとなるのは、走行中の安全が確保されていることです。
道路交通法では「無線通話装置を通話のために使用し、または画像表示用装置を注視しないこと(道路交通法第71条 第5号の5より抜粋)」と定められていますが、一方で「当該自動車が停止しているときを除き」「手で保持しなければ送信および受信ができないものに限る」とも記載されています。
つまり、停車中であれば操作も通話も注視も可能です。走行中でも、ホルダーなどで固定された、ハンズフリー状態での電話は問題ないということになります。
また、走行中のカーナビの注視はいけませんが、具体的に何秒以上が注視となるという規定はなく、取り締まりや交通事故の発生時には、現場の警察官によって判断されます。
運転中の通話について
ハンズフリーでの通話は道路交通法では問題ありませんが、都道府県の条例によっては、ハンズフリー通話が条例違反になる可能性があります。
たとえば、東京都道路交通規則の第8条(5)には「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」という記述があります。
つまり、カーオーディオから大音量で話し相手の声を流しているなど、緊急車両のサイレンや他の車のクラクションなどが聞こえないような、安全ではない状態での運転は条例違反となります。
大音量やイヤホンを着用してのスマートフォン(携帯電話)の使用は、ハンズフリーであろうとも条例違反になる可能性があり、周囲の情報が聞こえない危険もあるため、必要最低限の音量に調整しましょう。
スマホや食事、メイクはセーフ?
道路交通法にあるのは、スマートフォン(携帯電話)やカーナビに関する制限だけで、食事やメイクなどに関する制限の記載はありません。スマートフォンの操作などはもちろん違反となりますが、記述のない運転中の食事やメイクがまったく問題ないかというと、それは異なります。
車の運転をするにあたって、運転手は安全運転をする義務があります。道路交通法の第70条には「安全運転の義務」として、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキそのほかの装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定めています。
つまり、細かな記載はなくても、安全運転をないがしろにする行為は交通違反となります。「ここまではセーフ」「ここからがアウト」ではなく、走行中は運転に集中し、安全運転を心がけなければいけません。
自動運転の進化と法改正について
最後に、ながら運転とともに注目を集めている自動運転の進化と、それにともなう法改正について解説します。
自動運転の進化
近年、大きな注目を集めるのが自動運転技術です。人による運転なく車が自動で走り、目的地までいける未来を目指し、世界中の自動車メーカーが技術開発を進めています。
ただし、いきなり「人は何もしなくても良い」という理想は実現できません。少しずつ、段階を踏んで技術は進化していきます。
その段階を定義したものが、0から5までの6段階で分けられた"自動運転レベル"(注)です。
自動運転化レベルの概要
レベル | 名称 |
---|---|
レベル0 | 運転自動化なし |
レベル1 | 運転支援 |
レベル2 | 部分運転自動化 |
レベル3 | 条件付き運転自動化 |
レベル4 | 高度運転自動化 |
レベル5 | 完全運転自動化 |
- 出典:公益社団法人 自動車技術会「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」
レベル0がすべて運転手は操作して走行する状態で、レベル5がいかなる状況においても車がすべて操作して走行する状態と定めています。
2021年1月現在、日本で一般向けに販売されている車に搭載されている最も進んだシステムは"レベル2"です。レベル2では、前後と左右の2方向をシステムが操作してくれますが、ドライバーは常に周囲を監視し、万一のときは運転を代わることが必要なため、ながら運転は許されません。
しかし、その次の"レベル3 "は、少し状況が変わります。一定の状況という条件がありますが、システムが車を走らせているとき、ドライバーは監視をしなくて良いとされています。
システムが「問題があって、これ以上、運転を続けられない」となったときは、即座にドライバーが運転を代わる必要がありますが、ドライバーが運転に関する監視業務から解放される時間が自動運転レベル3では生まれます。
自動運転に合わせた法改正
自動運転技術のレベル3以上の車を走らせるには、法的な整備が必要となります。
実際にレベル3の車が走ったときの、ドライバーの責任範囲について道路交通法で定めなければなりません。そのために2019年(令和元年)に道路交通法が改正され、2020年4月に施行されました。
それによると、規定に適合する自動運転の車が規定された条件下で走り、条件外になったときにただちに適切に対処できる状態であれば、「携帯電話使用等禁止(安全運転義務への上乗せ)規定の適用を除外すること」となりました。つまり、「条件にあう車」「条件にあう走行シチュエーション」「問題があったときに、ドライバーがいつでも対処できる状態」であるときに限り、スマートフォン(携帯電話)の使用が法的に許可されたというわけです。
まとめ
道路交通法では、明確にスマートフォン(携帯電話)とカーナビの使用の制限を定めています。しかし、スマートフォン(携帯電話)やカーナビの普及に合わせて、ながら運転は増加の一途をたどり、それを原因とする交通事故も急増しています。
重要なのは、自身とそのほかの人の安全を守ることです。「ここまではセーフ」「ここからはアウト」ではなく、走行中は運転に集中して、安全運転を心がけなければいけません。
ながら運転による事故は、通常の交通事故よりも重大な事故となる可能性が高いというデータもあります。「見通しのいい道路だから」「いつも走っている道路だから」と油断せず、常に安全運転を意識してください。
- 本記事は2021年1月時点の情報を基に作成しており、法令は変更される可能性があります。ながら運転や関連する法令に関して不明点などがある場合は、警察庁にご確認ください。
記事監修者:鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
大学卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。レース出場経験あり。
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