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「自動運転」の各社の動向とロードマップ
近年、世間を賑わせているのが自動車の「自動運転」です。しかし本当に、ドライバーなし・運転操作なしで目的地まで連れて行ってくれるような自動車が登場するのでしょうか。2017年現在の実用化状況と将来に向けた課題について紹介しながら、実際に乗れるのはいつ頃になるのかを考察していきます。
「レベル」を追って進化を続ける「自動運転」
「『自動運転』の時代はもう間近だ」という意見をよく耳にするようになっています。しかし、その実現のためにはまだまだ多くの問題が山積しているのが現状です。自動運転車開発の歴史はまだ浅く、長くとも30~40年程度。自動運転という言葉が頻繁に使われるようになったのもつい最近のことです。
そもそも自動運転に関する技術は、運転操作を支援するという意味では安全運転技術にも通じるものです。自動運転の前段階として、現在は事故を防ぐための技術やドライバーアシストシステムの実用化が盛んに進められている段階と言えるでしょう。例えば、前方車両の走行状況に合わせて自動でブレーキやアクセル操作を実施する ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や、車線逸脱防止システムなどはすでに実車搭載されています。
自動運転技術の実用化にあたって政府は、SAEインターナショナルによる技術レベルの定義を採用しており、その定義は下記の表のようになっています。ドライバーが主体的に操作しなくても走行できるようになるのは、レベル3からであり、交通状況を問わずに運転が完全自動化されるのはレベル5です。ACCや車線逸脱防止システムを搭載した車はレベル2相当と考えられており、最新発表車種でもレベル3が現状。レベル5に至るまでにはさらなる技術開発・実証実験が必要と考えられています。
- 自動運転技術のレベル
レベル | 呼称 | 内容 |
---|---|---|
1 | 運転支援 | 自動運転システムが前後・左右(加減速・操舵)のいずれかの車両制御支援を実施することで、運転タスクをサポートする。安全運転にかかわる監視、対応主体はあくまでもドライバー。 |
2 | 部分運転自動化 | 自動運転システムが前後・左右(加減速・操舵)の両方の車両制御支援を実施することで、運転タスクをサポートする。安全運転にかかわる監視、対応主体はあくまでもドライバー。 |
3 | 条件付運転自動化 | 限られた交通状況・環境下で、自動運転システムがすべての運転タスクを実施。自動運転システムからの要求があった場合や、作動継続が困難な場合は、ドライバーの適切な対応が必要。安全運転にかかわる監視、対応主体は、作動継続が困難な場合を除いて自動運転システムとなる。 |
4 | 高度運転自動化 | 限られた交通状況・環境下で、自動運転システムがすべての運転タスクを実施。作動継続が困難な場合においても、ドライバーの対応を必要としない。安全運転にかかわる監視、対応主体も自動運転システムとなる。 |
5 | 完全運転自動化 | 交通状況・環境にかかわらず、自動運転システムがすべての運転タスクを実施。基本的にドライバーの運転を必要としない状態。安全運転にかかわる監視、対応主体も自動運転システムとなる。 |
- ドライバーがすべての操作を行う状態は「レベル0」とする。
- 「官民 ITS 構想・ロードマップ 2017」(首相官邸)より作成。
自動車メーカー各社の「自動運転」に対する取組み
国産メーカーでは、日産がCMなどで「自動運転」というワードを頻繁に謳っており、「プロパイロット」と呼ばれる同一車線自動運転技術を2016年のセレナ、2017年にはエクストレイルにも搭載しています。また、2018年には自動レーンチェンジ(車線移動)システムを市販車に搭載予定です。「ぶつからないクルマ」のコピーで有名なスバルでは、衝突被害軽減ブレーキ「アイサイト」を利用しながら、完全自動化への道のりを模索しているところです。もちろんその他のメーカーも自動運転技術の開発に余念がない状況ではありますが、国産メーカーにとってのターニングポイントになるのは、2020年だと言われています。政府も東京オリンピックの開催に合わせて、自動運転の実用化を目指しており、現在は官民一体の一大プロジェクトとして推進されているからです。
海外メーカーでは、2017年7月にドイツのアウディが世界で初めて「レベル3」相当の自動運転技術を搭載したモデルを発表。ドイツでは2017年秋に発売予定となっています。メルセデス・ベンツの自動運転技術も世界トップレベルだと言われており、2017年現在の現行型Eクラスでは、ウインカーを操作するだけで自動レーン変更できる機能を実用化しています。BMWも同様の技術は実用化できているものの、日本では混雑した交通事情に機能がマッチしないため、いまだ導入されていません。
そのほか、EV(電気自動車)専売メーカーのテスラも、「オートパイロット」と呼ばれる運転支援システムを実用化しています。アメリカでは法整備が進んでいることもあって自動運転車の公道試験が盛んに行われており、テスラもレベル5の完全自動運転機能を近い将来に実現できるとしています。
自動車の歴史を大きく塗り替える可能性の高い「自動運転」。その取り組みは自動車メーカーだけに限らず、他ジャンルの企業も開発に関わっています。特に有名なのは、インターネット検索大手のGoogleです。自動車メーカーと連携し、テストカーの公道試験を頻繁に実施しています。すでに実用レベルにまで達していて、早ければ1~2年後の市販開始が視野に入っていると報道されています。
「自動運転車」が公道を走るためには法律や保険の整備も必要
それでは、ユーザーはいつ完全な自動運転車に乗れるのでしょうか。期待は膨らむばかりですが、時期を明言するのは難しいというのが現状です。完全自動運転車が街を走るためにクリアしなければ問題は、実は技術的なものだけではありません。道路などのインフラ、自動運転でない車両との住み分け、政府の承認や法律の整備なども必要となるからです。
例えば現在、運転免許証を保有する人だけが車を運転できるという前提で交通関連の法令は定められています。しかし、完全自動運転が実現するのであれば、運転免許証の制度が根本から覆される可能性もあります。あわせて道路交通法などは全面的な見直しを迫られるでしょう。
さらには事故が起きた際の責任の主体・範囲も議論の対象となっています。完全自動運転で走行中に事故が起きたときの責任は、ドライバーや利用者(運転せずに搭乗する人や外部から操作する人を含む)にあるのか、それとも開発・製造をしたメーカーにあるのか。日本中で自動運転車が走り回るようになるためには、こういった要素の明確化も欠かせません。事故が起きたときの補償、つまり自動車保険も自動運転車に対応する必要があるでしょう。
自動運転車の開発を推進している政府も制度上の課題を認識しており、現在は警察庁や国土交通省、経済産業省などで論点を整理し、議論を進めている最中です。とはいえ、「車に乗り込んで行き先を伝えるだけで、あとはなにもせずに目的地に到着する」そんな未来の車の実現が着実に近づいていることは間違いありません。自動運転の実現によって交通事故が飛躍的に減少するとも言われています。より安全な交通環境を構築するためにも、技術開発の推進やいち早い周辺環境の整備を期待したいところです。
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