三井ダイレクト損保 開業25周年 社長インタビュー
「強くてやさしい」を胸に、新たな航海へ。三井ダイレクト損保が目指す未来

2025年、三井ダイレクト損保は開業25周年という節目を迎えました。この25年間の歩みは、時代の変化とともに挑戦と進化を重ねてきた軌跡でもあります。現在は「強くてやさしい」をブランドコンセプトに掲げたリブランディングが進行中。その背景にはどんな想いがあり、そして今後はどこを目指していくのか?これまでの歩み、ブランドへの想い、未来へのビジョンについて、社長の河村隆之に聞きました。
- 取締役社長 河村隆之
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1989年、大正海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)に入社。
2021年、当社常務執行役員を経て、2022年4月より現職。
25年間を支えた社員に感謝し、第2の創業期へ
三井ダイレクト損保にはどのような経緯で?
私は1989年、大正海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)に新卒入社して以来、損保業界一筋で歩んできました。当社に来たのは2021年からです。グループ内でもダイレクト型損保という全く異なるフィールドでしたので、「第2のキャリア」という思いで取り組んでいます。ちょうどリブランディングのタイミングと重なり、その責任者の役割を担うことになりました。
文化の違いなどは感じましたか?
それは感じましたね。グループ内でも、当社は規模も小さく、基本的に代理店を介さないビジネスモデルということもあり、組織や仕事のやり方に柔軟性がある。忖度で自分の意見が言えないということもなく、自由闊達な雰囲気が感じられ、当社特有のとても良い文化だと思いました。
開業25周年、これまでの歩みをどのように振り返られますか?
私は開業当初のことを直接知っているわけではありませんが、長く当社で働いてきた社員からさまざまな話を聞いています。当初は何も決まっていない中で、自分たちでルールを作り、オペレーションを築いていった。それは本当に大変だったと思います。その努力が現在の当社の礎になっていますし、支えてきてくれた社員たちには心から感謝しています。
私が来る前の約20年について、前半10年はダイレクト型損保マーケットへの先着により急成長した時期、後半10年は競争激化で踊り場に差しかかった時期でした。その後、MS&ADインシュアランス グループホールディングス(MS&ADグループ)の100%子会社化を経て当社の位置づけが明確になり、私としては「第2の創業期」という思いで、成長投資を含めた各種取り組みを進めています。

河村社長は、社員との1on1ミーティングを大切にしていらっしゃるそうですね?
はい、ひとりにつき最低30分、週に2人ペースで続けており、もう230人以上と対話しました。最前線における仕事の問題や社員自身の受けとめを教えてもらったり、私からは社長というより、社会人、損保社員、時には家庭人の先輩という立場からのアドバイスなどをしています。また、当社で活躍してきたベテラン社員から開業以降の当社の歴史を聞ける貴重な機会にもなっています。そこから学ぶことも多いですし、現在のリブランディングという改革の中でも“これまでの当社”への敬意は大切にしたいと思っています。
「強くてやさしい」に込めた想いとは?
「強くてやさしい」というブランドコンセプトには、どんな想いが込められているのですか?
検討当初は「やさしい」をコンセプトにしていました。当社の「やさしい」には3つの意味を込めていて、まず1つ目は、人が寄り添うコンシェルジュや事故解決サポーター、ニーズに合った補償のラインナップなど、お客さまのカーライフに「やさしい」こと。2つ目に、保険は難しいと思われがちなのでなるべく分かりやすく、情報の探し方やサイト・ツールの使い方が「やさしい」こと。そして3つ目は、お財布に「やさしい」こと。この3つの「やさしい」はこれまでの当社の文化にも合っていました。一方で、「やさしい」に加えて何かもう一つスパイスが必要ではないかという議論が出てきて、私たちは「強さ」を加えました。保険会社は金融機関であり、社会の公器でもあると考えています。お客さまにとって信頼できる、いざという時に頼りになる存在であることが不可欠です。そうした意味で「強くてやさしい」は、私たちがお客さまへお届けしたいものを端的に表すバランスのとれた非常に良い言葉だと思っています。

導入当初、社員の皆さんの反応は?
私としては正直、「強い」という漢字は強引、強圧などの単語にも使われるように、誤解されたり、拒否されたりするかもしれない、と心配もありました。しかし、打ち出してみると、社内外で好感を示してくださる方が多かったです。
特に社員たちから「『強くてやさしい』に通じる行動は、これが出る前から意識して既にやっています」と言われたのは驚きましたし、非常に頼もしく感じました。これまでの取り組みをきちんと言語化して世の中に伝えていくという意味でも、このコンセプトにして良かったと強く思っています。
「強くてやさしい」は、判断に迷ったときの拠り所としても機能しているそうですね?
はい。「強くてやさしい」ブランドと、物事を判断する際の指針であり社内の合言葉である「TRUE TRUST」の2つが、私も含めた当社全員の行動規範になっています。たとえば、何か問題に向き合うときに「それはTRUE TRUSTだろうか」という会話が自然と出てくる。これはとても良い文化だと自負していますし、今後さらに浸透させていきたいです。
未来へのビジョンと、さらなる進化に向けて
ブランドやサービスは今後、どのように進化させていきたいと考えていますか?
「強くてやさしい」も「TRUE TRUST」も、変えるつもりはありません。一方、商品やサービスは、お客さまニーズの変化に合わせてブラッシュアップし続ける必要があります。私が社会人になった1990年頃は携帯電話が普及していなかった時代ですが、今は多くの人が当たり前のようにスマートフォンを持つ時代で、ネットで保険に入るお客さまはもっと増えると思います。私たちの商品やサービスも、お客さまを取り巻く環境の変化にあわせて、いつ、どこにいても知りたいことが教えてもらえて、やりたいことができるように、アプリひとつで保険の相談、加入、事故対応の状況確認ができるなど、利便性を追求していく必要があります。ひとが持つ「強さ」と「やさしさ」を大切にしながら、生成AIなどの先進技術も積極的に取り入れていきたいと考えています。
業界を取り巻く環境が大きく変化する中、どのような危機感を感じていますか?
「自動車保険の市場は縮小していく」といった声もあります。市場全体を見ればそうかもしれませんが、当社の領域であるダイレクト型損保のマーケットにはまだまだ伸びしろがあり、ビジネスチャンスと捉えています。当社は現在約400億円の収入保険料ですが、自動車保険市場全体は4兆円規模で、成長の余地は十分にある。早期に500億円に到達し安定的に収益が出せる会社を目指します。
また、保険業法の改正や同じグループの三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保が合併する等の動きもあり、当社を取り巻く環境が変化していきます。お客さまのインターネット活用が当たり前になった現状も踏まえれば、今後大手損保各社がオンラインで保険を販売し、商品・サービスも見直していくことが考えられます。オンラインでの保険販売が普及していくことは当社にとってむしろ追い風であり、25年間で培ったダイレクトビジネスの知見や強みを最大限に発揮して、お客さまの体験価値を高め、選ばれる保険会社としてさらに成長していく考えです。
そして、それらの基盤となるのは社員であり、社員の皆さんが幸せを感じながら働けることが前提となります。お客さま満足度を高めるには、商品やサービスの質を向上していく必要がありますが、社員が幸せを感じられない会社が良い商品やサービスを提供できるとは思えません。ES(※1)が高まってCS(※2)が高まり、CSが高まることでお客さまに選ばれ、結果収益を得られる企業に成長していく、すなわちサービスプロフィットチェーンに取り組むということです。
- (※1)Employee Satisfactionの略。従業員満足度のこと。
- (※2)Customer Satisfactionの略。顧客満足度のこと。
社員の皆さんには、どのような姿勢や行動を期待されていますか?
これまでと変わらず、自由闊達な議論を大切にしてほしいです。社員一人ひとりが自己実現し、その結果として組織全体が強くなっていく、という循環が理想です。その中で、合言葉である「TRUE TRUST」を常に忘れず、プロフェッショナリズムをさらに高めていってもらいたいと考えています。 実際にリブランディングを行ったこの3年間ほどで、社員一人ひとりが着実に力をつけ、組織全体の成長にも繋がっていると感じています。そこで、次の中期経営計画についてはトップダウン型ではなくボトムアップ型で、皆で議論しながら共につくっていくスタイルにする予定です。自分たち自身で描いた未来に向けて進んでいくことで、より良い会社になっていくと信じています。
最後に、お客さまや関係者の皆さまへメッセージを。
今は「この3年間でやってきたことは間違いではなかった」という自信を持っています。「強くてやさしい」企業であり続けることを軸に、さらに進化していきますので、お客さまにはぜひ期待していただきたいです。
また、パートナー企業やグループ関係者の皆さまにも、引き続きご支援いただけるよう努力していきますので、ぜひご注目ください。

- 「強くてやさしい」
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当社がお客さまに対して”ありたい人格”を表すブランドコンセプト。それが示すのは、「正直で公平で、本音であること。どこまでもお客さまの立場を優先させる姿勢があり、心から尽くせること。親切で頼りになり、いざというときは守って差し上げられること。」、そんな企業となり、お客さまに選ばれ続けることを目指しています。
- TRUE TRUST
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当社全社員の合言葉(信条)。「強くてやさしい」を形にするために、当社がお客さまに対して、そして仲間や自分自身に対してとるべき姿勢を表しています。