【イラストで解説】スタビライザーの役割や効果とは?交換時の費用やセッティング例なども解説

2020年12月更新

自動車の足回り

スタビライザーはサスペンションに装着し、車体の傾きを抑えて走行を安定させるための車のパーツです。アンチロールバーとも呼ばれることもあります。

カーブ時の膨らみや曲がりすぎが気になるとき、スタビライザーのセッティングを変更することで改善する可能性があります。なお、走行に直接関係するパーツのため、誤ってセッティングしていたり破損していたりすると、重大な事故の原因になります。

本ページでは、スタビライザーの役割・効果のほか、交換方法や交換費用、セッティング例などを解説します。

スタビライザーとは?

スタビライザーとは、英語の“stabilizer”からきている言葉で、直訳すると「安定させる人」「(航空機の)安定板」「(船舶の)安定器」です。車のスタビライザーは、走行を安定させるための装置のことを指します。

具体的には、車の左右のサスペンション同士をつなぐ、コの字型やU字型のバネ棒状のパーツで、多くの車に設置されています。コーナーを曲がるときや車線変更時に発生するロール(車体が左右に傾く力)を抑え、横揺れを防ぐことで乗り心地をよくします。

なお、サスペンションはタイヤと車体をつなぎ、地面からの振動などを和らげる装置です。

スタビライザーの役割・効果

スタビライザーの原理(左旋回時)の解説 カーブ時に起きるサスペンションの動きを抑制することでロールを抑えて安定させる スタビライザーの原理(左旋回時)の解説 カーブ時に起きるサスペンションの動きを抑制することでロールを抑えて安定させる

スタビライザーの役割は、コーナーでのロールを抑えて車の乗り心地を保つことです。

スタビライザーが付いていない車は、直進走行していると左右のサスペンションがどちらも規則的な動きをします。しかし、カーブ時は外側のサスペンションは縮み、内側は伸びて車体は外側に大きく傾いてしまいます。

カーブによる車体の傾きは、サスペンションを強くすることである程度抑えることはできます。しかし、通常走行時に道路の凹凸があると車の縦揺れが大きくなり、乗り心地が悪くなってしまいます。

スタビライザーが付いていない車もある

実はスタビライザーは車の走行に必要不可欠なパーツというわけではなく、取り外しても走行不能になるようなことはありません。

実際に、前輪後輪ともスタビライザーが付いていない車や、どちらかのみに付いている車も存在します。スポーツカーなどでは、スタビライザーを付けず、代わる部品を設置する場合もあります。

また、凹凸のある山道のような悪路では、車体を水平に保とうとするサスペンションの動きをスタビライザーが抑えてしまい、かえって乗り心地が悪くなることもあります。

悪路を走行する機会が多い人など人によっては、スタビライザーが付いていない車種を選んだり、スタビライザーを取り外してセッティングを変更したりすることもあります。

スタビライザーリンク(スタビリンク)とは

スタビライザーとあわせて知っておきたいのが、スタビライザーリンク(スタビリンク)です。

スタビライザーリンクは、スタビライザーを車体に固定して支える部品です。スタビライザーとサスペンションをつなぐロッド形状のパーツになっており、「ボールジョイント」という人間の関節のような機構が付いています。この機構によりコーナーや段差などで生じる上下の動きに柔軟に対応しているのです。

スタビライザー スタビライザーリンク スタビライザー スタビライザーリンク

なお、ボールジョイントの内部は金属同士が擦れ合うのを防ぐために潤滑油(グリス)が塗られており、ゴム製のパーツ(スタビライザーブッシュ)で固定されています。

スタビライザーのセッティングについて

スタビライザーの役割は、車体を固定し支えるだけではありません。フロントとリアそれぞれのスタビライザーの強さ(硬さ)を調節することで、コーナーでの挙動を調整できます。

スタビライザーの強さ(硬さ)とは

スタビライザーをねじるときの硬さのことを“強さ”といい、硬いスタビライザーを設置することを“強くする”と表現します。スタビライザーが硬いほうがねじれにくくなり、スタビライザーの効果は強くなります。

スタビライザーを強くすると、よりコーナーでのロールが抑えられるようになります。ただし、強くしすぎると乗り心地は悪くなることもあるため、ロールの抑制と乗り心地のバランスに注意が必要です。

乗り心地を良くしたい場合などは、セッティングの際にスタビライザーだけでなく、サスペンション(バネ)、ステアリングショックアブソーバー(ダンパー)などのパーツ交換を含めてセッティングを見直すと効果を得やすくなります。

セッティング例

得たい効果ごとに、スタビライザーのセッティング例をご紹介します。
なお、セッティング例の解説では専門用語が出てきますので、以下を参考にしてお読みください。

アンダーステア ニュートラルステア オーバーステア

用語解説

用語 意味・説明
アンダーステア コーナーへ入るときに車が外側に膨らむ(曲がらない)こと
ニュートラルステア 膨らみや切り込みなどの偏りのないコーナリングのこと
オーバーステア コーナーに進入するときに車が内側に切り込んでしまうこと
プッシュアンダー コーナーで車が駆動力に押し出されて曲がりきらないこと
ステアリング 進行方向を変えるための操舵装置のこと
フロント リア セッティング例

ロールを少なくしたい

コーナーを曲がるときのロールを少なくするには、スタビライザーのフロントとリアを強くセッティングするのが有効です。

フロント リア セッティング例

オーバーステアを修正したい

曲がりすぎを修正したい場合は、フロントのスタビライザーを強くセッティングします。逆に、リアのスタビライザーを強くすると、コーナーを立ち上がったときのオーバーステアを修正できます。

フロント リア セッティング例

アンダーステアを修正したい

コーナーでの膨らみを修正するには、スタビライザーのフロントを弱くしてリアを強くします。

フロント リア セッティング例

プッシュアンダーを修正したい

コーナーで車が駆動力に押し出されて曲がりきらないプッシュアンダーを修正したい場合は、フロントとリアのスタビライザーを弱くすることで解消できます。

フロント リア セッティング例

ステアリングのレスポンスを良くしたい

ステアリングのレスポンスを良くしたい場合は、リアのスタビライザーを強くします。

スタビライザーのフロントとリアの強さで車のロールやステアリングは大きく変わります。上記のセッティング例を参考にして、コーナーでのハンドリングや乗り心地を調節してみてください。

スタビライザーの交換や費用について

スタビライザーを交換する時期の目安や費用について解説していきます。

スタビライザー交換の目安・サイン

スタビライザーは、はっきりとした交換時期が決まっているわけではありません。しかし、次のような問題があるときは交換を検討したほうがよいでしょう。

交換のタイミング 交換内容やセッティング方法について
カーブ時のロールが気になるとき セッティングを変更しても改善しない場合は、スタビライザーの交換が必要かもしれません。
走行中の揺れが気になるとき
車線変更でふらつくとき
サスペンションを交換、セッティングを変更したとき サスペンションを強めに交換したときは、同時にスタビライザーも強めに調整します。
スタビライザーが破損・劣化しているとき 危険な状態のため、速やかな点検・交換が必要です。

スタビライザー交換の費用

スタビライザー本体は、1本あたり約15,000円が相場です。交換の工賃は1本につき5,000円〜10,000円程度です。工賃を含めると1本20,000円以上となるため、たとえば、フロントとリアの両方を交換した場合は、40,000円以上かかる計算です。

さらに、スタビライザーリンクも交換する場合は追加で約10,000円かかり、スタビライザーブッシュの交換も必要になれば、数百円から数千円程度の費用がかかります。

スタビライザー交換の費用目安

交換内容 本体費用の目安 工賃の目安
スタビライザー 約15,000円(1本) 5,000円〜10,000円程度
スタビライザーリンク 約10,000円(2個セット) 3,000円〜5,000円程度
  • 上記は監修者の知見による料金相場です。料金は車種や整備工場によってそれぞれ料金は異なりますので、本体の価格や工賃は目安として参考にしてください。

スタビライザーを自分で交換(DIY)することはできる?

青色の自動車

スタビライザーは、部品と工具をそろえて手順どおりに行えば、自分で交換することも可能です。ただし、慣れない方にとっては交換が難しいパーツでもあり、用具を1からそろえるのも費用がかかってしまいます。不慣れな方や以下の手順を読んで不安や難しそうと感じた方は、ディーラーや整備工場などに交換を依頼してください。

交換する手順

スタビライザーの交換は、以下の手順で行います。

  1. ジャッキアップする
  2. タイヤを両輪外す
  3. スタビライザーブッシュとスタビライザーリンクを外す
  4. スタビライザーの脱着
  5. スタビライザーリンクとスタビライザーブッシュを装着
  6. タイヤを取り付けてジャッキを下ろす

1.ジャッキアップする

パンタグラフジャッキではサスペンションにテンションがかかるので、スタビライザーリンクを外せません。ガレージジャッキを使って両輪を水平に上げるようにしましょう。
ジャッキアップ後は、安全のために必ず“リジットラック(通称:ウマ)”を車体下部に設置してください。

ガレージジャッキによるジャッキアップ

2.タイヤを両輪外す

タイヤを両輪取り外します。外したタイヤは安全のために車体の下に潜らせておき、万が一リジットラックが外れて車両が落ちてきたときに、地面と挟まれるのを防止します。

3.スタビライザーブッシュとスタビライザーリンクを外す

スタビライザーリンクは2つのナットで固定されているので、レンチなどで回して外します。
緩み防止ナットが付いている場合は、六角レンチをボルト先端に差し込んでから固定されているナットを外します。

スタビライザーリンクが取り外せたら、スタビライザーと車体を固定しているスタビライザーブッシュを取り外します。
スタビライザーブッシュもボルトで固定されているだけなので、取り外しは難しくありません。

4.スタビライザーの脱着

もともと付いていたスタビライザーを外して、新しいスタビライザーを設置します。

5.スタビライザーリンクとスタビライザーブッシュを装着

スタビライザーリンクとスタビライザーブッシュを外したときと反対の手順で装着していきます。
スタビライザーを交換する際、スタビライザーリンクとスタビライザーブッシュも一緒に新しいものと交換するのがおすすめです。

6.タイヤを取り付けてジャッキを下ろす

タイヤを取り付けてジャッキを下ろしたら完了です。
完了までは慣れている方でも1本につき30分〜1時間、慣れていない方だと数時間かかってしまうこともあります。

車種によってどのように取り付けられているかは多少異なりますが、スタビライザーの交換方法自体はほとんど変わりありません。作業前には、スマートフォンなどでどのように取り付けられているのか足回りを撮影し、交換後に正しく戻せているのかを確認してください。

自分で交換するときのポイントと注意点

自分でスタビライザーを交換するときは、購入する前に自分の車に適合するかをしっかりと調べましょう。

また、スタビライザーは足回りのパーツのため、スタビライザーやスタビライザーリンクを固定しているナットが錆びていて外れない場合があります。無理やり外そうとすると破損する恐れがありますので、外れないときは潤滑油をかけたりブラシでこすったりしてから外してください。

スタビライザーの交換には、以下の部品と工具が必要です。

  • スタビライザー本体
  • スタビライザーリンク
  • スタビライザーブッシュ
  • ナット
  • 六角レンチ
  • ガレージジャッキ
  • メガネレンチ
  • ラチェットレンチ

使われているナットの大きさはメーカーや車種で異なる可能性があるので、事前に確認しておきましょう。

まとめ

スタビライザーはコーナーを曲がるときのロールを抑えるパーツです。
セッティングによってコーナリングや乗り心地が変わってくるので、より自分好みに調節したい方にとっては奥の深いパーツといえます。

コーナーでのロールが気になるなど、安定性に不安を感じたときにはスタビライザーを交換するのもおすすめです。破損や劣化を見つけたときも速やかに交換してください。

  • 本記事の内容は特段の記載がない限り、一般的なスタビライザーの効果や役割、および、交換方法や費用の解説です。スタビライザーの交換にかかる費用をはじめ、スタビライザーの交換方法などは、メーカーや整備工場にてご確認ください。

小西 伸二

記事監修者:小西 伸二(こにし しんじ)

保有資格:1級小型自動車整備士・自動車検査員・2級/3級ガソリン整備士

高校卒業後、自動車メーカーの生産工場に就職。自動車整備士に憧れ、大阪の小さな修理工場で働きながら、自動車にまつわるさまざまな資格を取得。現在も自動車整備の仕事に携わっている。


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