いつかはだれもがおひとりさま そんな時代の医療保険を考える

[INDEX] 医療保険の限界を知る 医療保険は貯蓄ができるまでのツナギ 高齢でおひとりさまになったときに必要なもの 医療保険の限界を知る 医療保険は貯蓄ができるまでのツナギ 高齢でおひとりさまになったときに必要なもの

1:医療保険の限界を知る

漠然と「大病をしたときに困るから医療保険に加入したい」と考える方が多いのですが、医療保険はよい治療が保証される保険ではありませんし、医療費をカバーするものでもありません。入院したら1日5,000円とか1万円という定額の入院給付金が、手術をしたら入院給付金に所定の倍数を掛けた手術給付金が受け取れるものです。自己負担分を保障する医療保険もありますが、入院することが条件です。たとえケガや病気をしても自宅療養だけでは給付金は一切受け取れません。最近は入院日数が短くなる傾向にありますし、通院だけでも高度な治療が受けられるようになっています。医療費はかさむけれど医療保険からの給付は受けられないといった事態も考えられます。しかも、給付対象となる「入院」とは、「病院などで医師の管理下で治療に専念する状態」のことです。「高齢になるほど病気やケガが心配。だから終身保障の医療保険に入らなくちゃ」と考える方が多いのですが、治療の必要性が低い療養目的の入院は対象になりませんし、介護施設への入所や在宅療養も対象外です。

終身の医療保険に加入するということは、30歳の方であれば50年以上ものお付き合いになる可能性があります。そのころ日本の医療制度がどうなっているのかも重要です。国の方針は、入院は短く、在宅で看取りまでできるシステムを構築することですから、現状の入院を基本とする医療保険が、将来にわたって有効とは考えにくいのではないでしょうか。

亡くなると数千万円が受け取れる生命保険と違って、医療保険から受け取れる金額は数万円からせいぜい数十万円です。不確実な将来に備えるには、保険料を支払う代わりに医療費のための貯蓄をしたほうが合理的です。入院、通院、自宅療養などを問わず、予防にも使えるオールマイティの医療保障になります。

▲ページの先頭へ戻る

2:医療保険は貯蓄ができるまでのツナギ

現在まったく貯蓄がないか、貯蓄はあっても子どもの教育費など、使い道が決まっていて、医療費のために取り崩したくないという方もいるでしょう。そういった方は保険期間が短く、シンプルで割安の医療保険に加入して、医療費貯蓄ができるまでのツナギにしてはどうでしょう。同じ保障内容でも終身と10年定期ではおよそ2倍くらいの差があります。保険料は入院中も支払わなければなりません。

2倍の保険料を支払っても給付額は同じです。医療費の準備を入院限定の保険に集中させず、貯蓄と組み合わせておけば、入院したときには給付金と貯蓄の両方を医療費にあてることができます。

保険期間10年の医療保険に加入すると同時に、10年後に更新をしなくてもいいように、目標額を定めて貯蓄をスタートさせてはどうでしょう。終身の医療保険より割安な分、貯蓄余力は高いはずです。月々5,000円ずつ積み立てをすれば10年後には60万円プラス利息が貯まります。10年経ったときに、その時点の貯蓄額や医療制度などを考慮して、更新するかどうかを検討します。たとえ病気になっていたとしても、更新は無条件でできますから心配はいりません。保険料は更新時の年齢で再計算するため高くなりますが、貯蓄ができた分、保障額を下げて更新すれば、保険料負担を軽くできます。

▲ページの先頭へ戻る

3:高齢でおひとりさまになったときに必要なもの

保険は「請求なくして給付なし」です。本人が動けない状況になっていれば請求手続きができません。家族を代理請求人に指定することができますが、おひとりさまでは代理人に指定できる人がいません。もし認知症で契約そのものを忘れてしまえば、それまで支払った保険料が無駄になります。終身保障の医療保険に加入する際には、任意後見制度の利用など、代わって手続きをしてもらえるような仕組みをあらかじめ整えておく必要があります。

おひとりさまになったときに重要なことは、1日でも長く自立生活を維持すること。掃除、ゴミだし、炊事、洗濯など、日常的な営みを崩さずに続けていくことが自立生活の維持につながります。身体の調子を保つ質の良い食事や適度な運動、話し相手となる友人知人などがそれらを支える要素です。もし、加齢とともにそれらを行うことが億劫になってくれば、家事サービスなどの利用も選択肢の一つです。また、容態が悪くなってしばらく床に就いた後、身体機能を取り戻すためのリハビリも、それから以降の生活の質を保つための有効な手立てです。

これらはすべてお金がかかることですが、多くの場合は保険金支払いの対象とならず、手持ちの現金で賄うことになります。貯蓄が心もとないために早期治療ができずに重篤化したり、家事サービスを頼めないために生活の質が低下して介護状態に進むといったことは避けたいものです。高齢になったときに頼りになるのは、使い道に縛られない貯蓄、友人知人、そして各種制度のことを相談できる窓口です。日常生活自立支援センターのように、福祉サービスに関する情報提供や手続きの援助などを行うところも暮らしを支える大切な保険です。

▲ページの先頭へ戻る

ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓氏 プロフィール

大手生命保険会社勤務の後、FPとして独立。現在は金融機関に属さない独立系FP会社「生活設計塾クルー」のメンバーとして、生活設計や資金運用、保障設計などの相談業務、各種団体のセミナーや講演を行う。NIKKEI NET『医療保険特集』(月1回)、くらしの手帖『おさいふにゅうす』(クルーメンバー持ち回り)連載中。

著書:『医療保険は入ってはいけない![新版]』(ダイヤモンド社)『お金のプロがすすめるお金上手な生き方』(コモンズ) 共著:『新版 生命保険はこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)他

生活設計塾クルーHP http://www.fp-clue.com/ http://www.fp-clue.com/