安全運転特集 アクティブセーフティトレーニング体験レポート

よくクルマを運転し、経験も積まれた方なら、自分の運転にもある程度自信を持たれていることが多いと思います。しかし、事故というのは自分の想定を超えたところで起きるもの。ならば、その“想定を超えた危険な状況”を、事前に経験しておけば、いざと言うときにも、少しは落ち着いて対処できるかもしれません。 そこで今回は、そんな危険な状況を安全に体験できる安全運転講習をご紹介します。

運転に慣れれば慣れるほど、ひやっとするような機会は減ってきます。しかし、そのひやっとした先の経験というのは、どれだけ運転歴があっても、なかなか増えるものではありません。たとえばABSを効かせなければいけないほどの急ブレーキ、あるいはクルマのスピン、といった状況は、めったに遭遇することではありません。しかし、そういった想定外の状況でどれだけ落ち着いた運転ができるかによって、その先の事故に至るか至らないかが分かれるのかもしれません。そこで、そうした普段街中では経験できないような状況を、広くて安全な場所で体験できる安全運転講習が、各所で開催されています。

日本全国で開催しているJAFの運転実技講習会(http://jafevent.jp/event_info/drive/index.php)や、富士スピードウェイの中にあるトヨタ交通センター モビリタ(http://www.toyota.co.jp/mobilitas/index.html)などがありますが、今回実際に参加したのは、栃木県にあるツインリンクもてぎのアクティブセーフティトレーニングパークです。 http://jafevent.jp/event_info/drive/index.php http://www.toyota.co.jp/mobilitas/index.html http://www.toyota.co.jp/mobilitas/index.html

アクティブセーフティトレーニングパークには、雨の路面を再現できる散水装置付きのコースや、雪道のように滑りやすい低μ路、さらには外部から強制的にスピンを誘発できるコースなど、危険な状況を安全に体験できる施設が揃っています。それぞれのコースでのトレーニングを個別で体験できるほか、運転の技量や希望に合わせて、いくつものパッケージメニューも用意。今回は中級者向けの「リスクシミュレーション」の模様をレポートしますが、他にも車庫入れや縦列駐車など、ペーパードライバー向けのトレーニングや、より上級者向けのクルマの限界域で操る楽しさを追求するコースなども用意されています。それでは、リスクシミュレーションのメニューを順を追って紹介していきましょう。

ツインリンクもてぎ アクティブセーフティトレーニングパーク 電話:0285-64-0100 URL:http://www.twinring.jp/astp/ リスクシミュレーション 価格:1万6,800円(税込)※昼食付き 車両:持ち込み、またはレンタル http://www.twinring.jp/astp/

INDEX 安全運転特集 〜アクティブセーフティトレーニング体験レポート〜

1:正しいシートポジションとれてますか? 2:クルマの日常点検は“ブタと燃料” 3:反応してブレーキペダルを踏むまで約1秒 4:時速20kmで味わうコーナリング中の横滑り 5:滑りやすい路面でのブレーキ 6:スピン状態からのリカバリー 7:ハイドロプレーニング

1:正しいシートポジションとれてますか?

危険なことを安全に体験する。そのためには、まずきちんとした運転姿勢がとれていなければいけません。ということで、まずはインストラクターにより、運転姿勢のレクチャーがおこなわれます。正しい運転姿勢をとることで、ちゃんとブレーキ、ハンドル操作ができるうえ、疲労軽減にも繋がり、万一の事故の時にも、受けるケガが減らせる可能性があります。運転姿勢は慣れがありますので、ついつい自分のくせがついているもの。ですが、本当にその姿勢が正しいのか、こういった機会に確認してみるとよいのかもしれません。

  1. 1:シート奥深くまで腰掛け、シートを前後に調整。ブレーキペダルを奥まで踏み込んだ時に体が前後にずれずしっかりと踏み込め、足が伸びきらない位置に合わせます。
  2. 2:ハンドルのてっぺんを持ち、背中(肩甲骨のあたり)がシートバックから離れない位置にシートを起こします。ステアリングのチルトやテレスコピック調整も併せて良い場所を見つけますが、シートを寝かせすぎるのは禁物です。
  3. 3:ヘッドレストは、その中心が、目と耳を繋いだ延長上に来るように高さ調整します。
  4. 4:シートベルトは肩甲骨と腰骨にあたる位置に調整し、たるみを取ります。また、肩のベルトが首に掛からないようにしましょう。

2:クルマの日常点検は“ブタと燃料”

また、安全な運転のためには、クルマの日常点検も重要です。特に意識的にチェックするべき点を“ブタと燃料”なんて言うんだそうです。つまり、ブレーキ、タイヤ、灯火類、そしてガソリンですね。ブレーキは、足下に空き缶などが落ちていて、ブレーキペダルが踏めなくなるようなことがないかなど、ブレーキがきちんと踏めること、効くことを確認。タイヤのチェックは、まず空気圧。最近は低偏平で見た目では空気圧が分かりにくいので、月に1度程度はきちんと測定し、調整しましょう。このとき、駐車場で一部のタイヤだけに日が当たっている状態や、高速道路を走行した後などですと、タイヤの中の空気の温度がばらついていたり高くなったりしていて空気圧が正確に測れません。また、ひび割れや残り溝もチェック。乗用車の場合、溝の深さは新品では8〜9mmほどで、スリップサインが1.6mm。しかし3mmを切るとタイヤの特に雨の日の性能が著しく低下しますので、その場合にはタイヤを交換するか、雨の日は速度を落とすといった対処が必要です。コミュニケーションにも役立つ灯火類のチェックは、特にブレーキランプが一人では確認するのが難しいですが、たとえばコンビニの駐車場で、ガラスの写りこみを使うなどしてチェックすることができます。最後にガソリン。人間が同時に判断できるのは8つ程度のこと。ガソリンの残りを気にしつつ、あいているガソリンスタンドを探しつつ、となれば、当然運転自体への集中力が減ってしまうことになり、事故にあいやすくなってしまいます。また、先の震災の時のようにクルマが重要な役割を果たすこともあるので、早め早めの給油をしておくのがよいでしょう。

インストラクターが日常点検を説明。本当に簡単なチェックをしておくことが安心に繋がります。

スリップサインが出るまで車検はOKですが、安全面ではもっと早めの交換が安心です。

3:反応してブレーキペダルを踏むまで約1秒

リスクシミュレーションで最初に実践するのは、運転と反応という項目。まずは40km/hから、パイロンの位置で急ブレーキを踏んで、停止までにどれくらいの距離が必要かを体験します。今のクルマはABSがついているので、とにかく思い切りブレーキペダルを踏むことがコツですが、普段それほど強くブレーキを踏む機会もないため、思い通りにいかないことも。何度か挑戦すると少しずつ慣れて、停止までの距離が短くなっていくのを体験できます。

40km/hからパイロンを目印にフルブレーキ。一気に強く踏めないと制動距離が伸びてしまいます。

次にやるのは、コース上にある電光掲示板の表示が変わったら急ブレーキ。表示される対向車や飛び出してきた人といったアイコンに応じて、そのまままっすぐ停車するか、あるいは対向車線にはみ出して回避するかを判断し行動するというもの。進入速度は先ほどと同じ40km/hですが、事前に把握しているパイロンの位置でブレーキを踏むのとは違い、反応するのに1秒程度は多く時間が掛かってしまいます。そしてそれが停止までの距離を大きく伸ばすことを実体験できます。

コースの両脇の電光掲示板に表示されるアイコンの種類や向きによって、停止か回避を判断します。

こうした体験から、街中での走行では、反応時間の1秒と停止までの1秒、あわせて少なくとも2秒程度の車間距離が必要だということが理解できました。

4:時速20kmで味わうコーナリング中の横滑り

続いてはコーナリング中の横滑りを体験するスリパリーコーナリング。使うのはスリパリーコースと呼ばれる全長230mのコースで、コースはアスファルトの他、石畳やタイル張りなど5種類の異なるμの路面が用意されています。最も滑りやすいものだと、夏タイヤで雪の上を走る程度のμのもの。ですので、20km/h程度のゆっくりした速度でも、アンダーステアやオーバーステアを体験することができます。

スリパリーコースに1台ずつ入って走行。

散水装置で濡れたタイルや石畳など、路面μは場所ごとに異なる。

滑ると分かっていても滑ってしまうほどの低μ路ですが、フロントタイヤが滑ったり、リアタイヤが滑ったりとクルマが滑る感覚を体験できます。その上、インストラクターが今なぜ滑ったのかをアドバイスしてくれるので、タイヤの限界を超えないための、丁寧で適切な操作が重要であることを身を持って体験できます。最後にはタイムアタックなどもあり、クルマの運転の難しさを安全に楽しく体験することができました。

操作が雑だとまったく曲がらずコースアウトすることも。

上手く曲がれると今度はリアタイヤが滑り始める。

最後はタイムアタック。焦ると滑ってタイムロスしてしまう。

動画はこちら スリパリーコーナリング アンダーステア体験@ スリパリーコーナリング アンダーステア体験A スリパリーコーナリング オーバーステア体験 スリパリーコーナリング グリップ走行 スリパリーコーナリング 滑りの体験

5:滑りやすい路面でのブレーキ

次は滑りやすい路面でのブレーキ。まずは、乾いたアスファルトの3〜4倍滑りやすいという水が撒かれたタイル張りの路面で、40km/hからの急制動を体験します。先ほどのアスファルトでは5m程度で止まれましたが、滑りやすい路面だと、いくらABSが効いていても、制動距離が何倍にも伸びてしまうことが実感できました。

濡れたタイル張りの滑りやすい特設コース。

滑りやすい路面だと制動距離が大きく伸び、噴水の壁にぶつかりそうになる。

さらにその状態からの回避も体験。今度は同じコースで、目の前に噴水の壁が現れ、これをブレーキしつつステアリング操作で回避するというもの。ABSが効いていればステアリング操作に応じてクルマが曲がるはずです。速度は35〜45km/h程度で行いますが、滑りやすい路面なので速度が5km/h上がっただけでもとたんにステアリングが効きにくくなり、きちんと操作できないとスピンしてしまうようなことも。いくらABSがついていても、タイヤの性能以上にスピードが速すぎたり、適切な操作がなければ、大きな事故に繋がってしまうことを体験できました。

進入速度が速いと止まりきれないので、ステアリング操作で水の壁を回避。

フルブレーキを踏みつつステアリングで回避。しかしそのままだと今度は横滑りでスピンしてしまう。

6:スピン状態からのリカバリー

日本で唯一という、外乱によって強制的にクルマをスピンさせる装置を使ったトレーニングです。路面はさきほどと同様の滑りやすい濡れたタイル張りの路面。まずは40km/hで進入し、クルマのスピンを体験。次に強制的にスピンさせられた状態からクルマをリカバリーし、目の前に現れる水の壁の回避に挑戦します。まずは進入速度35km/hからスタート。たった35km/hでも少しカウンターステアを当てるのが遅れると、あっという間にリカバリー不能になってしまいます。さらにカウンターステアが上手く当てられても、その後の戻しが遅いと、今度は逆向きにスピンしてしまいます。速度を上げるとさらに難易度がアップ。タイヤのグリップ性能の重要性を再認識できました。

クルマが通過すると横にスライドしてスピン状態にする装置。

35km/hでも反応が遅れるとすぐにスピンしてしまう。

ある程度運転に自信がある人でも、スピンを回避できても水の壁につっこんだり、振り返しでスピンしてしまったりと苦戦をしていました。

カウンターステアを駆使してスピンをリカバリーしつつ噴水の壁を回避。

動画はこちら 低μ路 スキッドリカバリー【スピン】 低μ路 スキッドリカバリー【リカバリー】

7:ハイドロプレーニング

教習所でも教わるハイドロプレーニング現象。深い水たまりなどでタイヤが浮いてしまい、ハンドルもブレーキも効かなくなる現象ですが、これを実際に体験することもできます。安全のため、インストラクターが運転し、助手席での体験となりますが、遅めのスピードでは大丈夫だったものが、速度を上げると一瞬ですがクルマが浮いた状態になることを体験でき、日頃の安全点検や、タイヤの重要性を再認識できました。

大きめの水たまりという感じでしたが、車速が上がるとハイドロプレーニングを起こしていました。